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Channel: トレンダーズスタッフ日記
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悪くない天気と自転車と公園にいるおじさんと

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平日。朝。出勤。
全速力で駅に向かう自転車。
通り過ぎる公園。
まだ子供が遊ばない公園。
そこにスエット姿で、1人たたずむおじさん。

仕事、無いのかなぁ。
家族とか、家とか。なんて。

ついつい余計な事を考えてしまう林アイコン 林でした。



その朝、嫁の方が少し早く家を出ました。


身支度を整えた嫁は、
一方パジャマ姿でゴミ袋を持った僕と
同時に玄関を出ました。

僕がゴミ捨て場から戻る間に
原チャリに『おはよう』と、
こてつには『留守番』を言いつけ、
玄関で再会した僕と最後に『いってきます』と
そして『いってらっしゃい』を。



こてつ


僕は空を見上げ、悪くない天気を確認して、
ゆっくり地上に視線を戻せば、
原チャリで走りだす嫁の後ろ姿。

さ~て自分も、もうシャワーを浴びて出発と、
深呼吸をしてドアノブを掴むが、動かず。

ドアノブは動かず。ドア開かず。

ここからスローモーション。

引っ越してもう半年以上の、この家。

玄関はカードロック式。

ごくまれに、カードをかざしていないのに
鍵がかかっていることがあり
「これ、時間が経つと自動的に閉まるの?」
なんて嫁と話題にした事が数回ありました。

「そんなことだったら、いつか締め出されちゃうね」

「いつか締め出されちゃうね」

「締め出されちゃうね」

それが今。

振りかえると、原チャ嫁は
ちょうど交差点を右折するところ。

「ミキティー!」か、またはそれ以上に、
嫁の名前を大声で叫んではみたものの、
エンジン音の最も近くにいる彼女には
届くはずがないのは分かっていたので全力ダッシュ。

起きて数十分で全力ダッシュ。

僕が交差点に到着する頃には、
原チャ嫁は次の交差点を左折するところ。

左手を上げ、右手で口笛を鳴らし、最後の悪あがき。

(咄嗟に「自分」という存在をマックスでアピールすると、
 僕の場合はこうなるらしいです。)

…が、やはり届かず。

「締め出されちゃったね」と心でツイート。エアツイート。

だって携帯無いし。何より鍵が無いし。パジャマだし。一人だし。

(A案)
壁をよじ登って、3階までのどこか開いてる窓を探す。

(B案)
まだ深いコミュニケーションのないご近所を頼ってみる。

(C案)
交番でおまわりさんを味方につける。


…じゃ、C案で。

ですが最寄りの交番、駅っす。


~数時間後~


おまわりさんに見方して頂き、
いろいろな手は尽くしたのですが、

結果、嫁の携帯電話を暗記していない僕は、
当時お世話になった不動産屋さんを頼るしか方法が無くなり、
その不動産屋さんの開店を待つことに。

何やら気まずくて交番を後にして。

パジャマ姿で。お金も無く。どうしようかと。

暇つぶしのスマホもありません。

どこで開店を待とう…。

そうだ、公園へ行こう。

やっと冷静になってきて。

のど、乾いたな…。とか。

朝、淹れてもらったコーヒー。
もう冷めてるだろうな。とか。

こてつは何も知らず、寝てるかな。とか。

駅の近くの公園。ベンチ。

道路側に向くと「なんだあの人」みたいな視線が痛いので、
横を向きました。

視線をやるスマホも無いので、
公園内の植木の本数を数えていました。

時計を見ては、開店まで数時間。

平日。朝。出勤。
猛スピードで自転車が走り去る公園。
まだ子供が遊ばない公園。
そこにスエット姿で、1人たたずむおじさん。

仕事、ありますが、
少し遅れます、申し訳ありません。

家族、いますが
携帯番号を覚えてません。連絡取れません。

家、締め出されてます。いろいろありまして。




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